

SUさんの庭
2016.7.8(金) 陽殖園訪問記 太陽が育て殖やしてくれる庭
半世紀をかけ、園主・高橋武市さんがたった一人で、北海道は紋別市滝上町の大地に絵を描くように、池を掘り、山を造り、道を造り、木や花を植えました。約8万平方メートルの敷地には、約800種類の季節の花々が春・夏・秋それぞれに咲き誇ります。2007年に刊行された「武市の夢の庭」という本を読んでから、一度は行ってみたいと想いが募っていたところ、クラブツーリズムの「旅の友」で見つけた「テーマのある旅」。「約800種類の花咲く百花繚乱の庭・北海道滝上『陽殖園』」「開園前に園主が特別案内」これだ!早速NOMUさんを誘って申し込み、催行決定。長年の夢かなって、ついに陽殖園に行けることになりました。
陽殖園の麓の国道沿いの案内看板に、「日本一変わってる庭園・陽殖園・高橋武市」とありました。「実際の武市さんてどんな方だろう。どんな庭だろう。」まだ見ぬ夢の庭に想いが飛びます。その門前にやっと立つことができました。

約束通り朝の8時に武市さんが道を下りてきて開門。実際にご本人が目の前で話されていることに感激しました。若々しく見えます。関西発のツアーは初めてということで、普段は日曜日しかガイドはしないそうですが、特別に金曜日にもかかわらず、しかも朝の8時からガイド開始。10時までの2時間、ユーモアを交えて園内をガイドしてくれました。
この陽殖園の特筆すべき点は、園主の高橋武市さんがたった一人でこの庭を整備してきたこと。昭和30年、中学2年生14歳のときに野菜売りの行商のかごにレンゲツツジの花をさして歩いたところ、野菜よりも高い値段で花が売れた。それで花を植え始めたことが花を生業に選ぶきっかけとなり、陽殖園の造成を始めたといいます。

武「ルピナスはほっといたら藤色になっちゃうの。キレイにピンクを保っているでしょ。ウツギは白やピンク、一重に八重、ボール状に固まって咲くのとかいろんな種類を場所を変えて育てているよ。」

武市さんは、花を育てるだけでなく、花の品種改良にも取り組んできたそうで、真っ赤なルピナスや八重咲きのヒメヒマワリは武市さんが世に送り出した品種だそうです。何年も何年もかけて造り上げていった庭。だから、陽殖園は武市さんの夢の庭。自分が好きなように、こうだったらいいなと思う庭づくり花づくりを工夫されてきたし、今も現在進行形で夢の庭づくりに励んでおられる。スゴイです!
武「園内に入って最初の見所は、この斜面。今は青いエゾクガイソウがのびのびとしているでしょ。白いのは俺が見つけて殖やしていってるよ。春はスイセンで彩られる。夏には、赤いベルガモットで埋まるよ。」

同じ場所なのに季節が変わると次々と別の花が咲いていく。植え替えもしてないのに・・。陽殖園では、花が咲き終わったものと、今盛りの花と、これから咲こうとしている花が同居しているんですね。これこそが、武市さんが考えに考え抜いて編み出した陽殖園独自の植え込み方法なんだろうな~。しかも、花が元気です!エゾクガイソウの勢いのいいこと!「昭和40年からは完全無農薬、化学肥料を全く使っていません。」とのことでした。

この水場で朝の4時から水汲みをして上の家まで運ぶのが武市少年の日課だったそうです。「家が貧しかったので、長男の自分が手伝うのは当然のこと。おかげで、体力がついたよ。」とおっしゃってました。

ここは、昔住んでいた家があったところだそうです。下の水場からここまで水を何往復も運んでたんだね~。

武「手をかけるのは、植えた年と翌年くらいまで。3年目からはどの植物も自分で生きていけるようになる。植物がそこで自分で生きていける方法、それをいつも考えているんだ。」ここは造成して2年目に入る道だそうです。

ついに来れたエリカ山!平坦な土地にアクセントを付けたいと冬場にコツコツと造っていった山。これが手作りの山だなんて驚きです!!この山に武市さんはエリカを植えました。ヒースとも呼ばれるエリカなら零下30度の冬も乗り越えられると考えてのこと。早春、その淡いピンクや濃いピンクのエリカの花が、小山全体を埋め尽くすようになった1975年、武市さんは、自然のままこの地で育つ植物とともに生きていこうと心に決めたそうです。

20代の頃に造ったトンボ池。連日、つるはし、スコップなどを使って、約3ヶ月かかって池を掘り終えたそうです。池ができて大喜びしたのは武市さんだけではありませんでした。春になるとエゾアカガエルが、夏にはトンボがこぞって産卵にやってきました。「秋に池のそばでしゃがんで仕事をしていたとき、ふと顔を上げると、そこらじゅう、もう一面に赤いトンボがいるんだ。どこもかしこもまわりが全部トンボで、みんな同じ西の方を見ていた。呆然となって、夢の世界にいるようだった。」ロマンチストですね~。

さらに新しい池ができていました。まだまだ進化中ですね。

10時から約束通り20分間の自由散策。受付に戻り、記念に「武市の夢の庭」の本にサインしてもらいました。楽しんでもらいたいという想いがいっぱい詰まった陽殖園。季節を変えてゆっくり見たいです。短い滞在でしたが、いいものを見せてもらいました。ありがとうございました。

☆「武市の夢の庭」(2007年初版発行 小学館)さとうち藍・文 関戸勇・写真
完
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